Little Halftime Talk

Soccer Columns in Jweekly
- San Francisco Bay Area Japanese Newspaper
【連載】サッカーむだ話 ハーフタイムのつぶし方
17 ワンクラブマンの
価値



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2021/08/27 掲載







 プロとしてのキャリアを一つのクラブに捧げた選手のことをワンクラブマンと呼ぶ。有名なのはACミランのパオロ・マルディーニ、ASローマのフランチェスコ・トッティあたりか。彼らは忠誠心やクラブ愛の象徴として語られ、逆に長年世話になったクラブを離れる選手は裏切者などと表現されることもある。
 しかし選手の目指すものも多様であることを忘れてはいけない。上記のワンクラブマンが所属していたのはいわゆるビッグクラブであり、彼らはキャリアの中で多くのタイトルを勝ち取ってきた。しかしほとんどの選手はもっと小さいクラブでキャリアを始めるわけで、今年、下部組織含め、20年を過ごしたアストン・ヴィラ(イングランド)を離れたジャック・グリーリッシュもそうだった。そのため、選手がトロフィーを掲げたるためにビッグクラブにステップアップすることは責められないし、むしろ応援されるべきだと思う。
 一方で、一定の年齢を過ぎ、ある程度の成功を得た選手はクラブに残り、クラブの象徴としてプレーする傾向にある。例えば、今シーズンパリサンジェルマンに移籍してしまったが、メッシはこの例に当てはまる。2010年代前半のバルセロナの成功は語るまでもないが、近年はイニエスタなどの一時代を築いた選手達が退団したこともあり、チームも低迷していた。それでもチームに残ろうとしていたのはチーム愛からであり、クラブにとっての自分の存在をよく理解していたからだろう。
 ワンクラブマンになることに価値があるわけではないが、クラブにとっての重要性は増す。だからこそグリーリッシュの移籍はプレミアの移籍金最高額を更新したわけだし、ずさんな経営でメッシの移籍を許してしまったバルセロナは批判の的となっている。つまりワンクラブマンとはクラブと選手が相思相愛でないといけないのだ。




shumpei WRITER:菊地俊平
日韓W杯が開催された2002年日本生まれ。在米8年。サッカー歴12年。
ポジションはMFまたはFW。好きな選手は松井大輔。来春から日本で大学生!